2026年 きさらぎ賞(G3)徹底回顧:究極の瞬発力テストが暴いた「次代の主役」

レース回顧

きさらぎ賞(G3) レース結果

2026年2月8日 京都競馬場 芝1800m(外回り)

着順馬番馬名性齢斤量騎手タイム着差通過順上り3F人気オッズ体重(増減)
11ゾロアストロ牡357ハマーハ1:48.05-433.313.5468 (0)
22エムズビギン牡357川田将雅1:48.02-233.523.7508 (-6)
37ラフターラインズ牝355藤岡佑介1:48.0ハナ8-732.847.0458 (-4)
46コレオシークエンス牡357浜中俊1:48.1クビ1-133.8819.5444 (0)
55ストームゲイル牡357吉村誠之1:48.23/43-233.7716.9472 (+2)
64ゴーイントゥスカイ牡357荻野極1:48.33/47-733.234.2512 (+16)
79ローベルクランツ牡357松山弘平1:48.51 1/48-933.0610.9494 (+10)
83サトノアイボリー牡357団野大成1:48.92 1/25-634.0959.5492 (+4)
98ショウナンガルフ牡357横山和生1:49.013-434.359.0480 (-12)

配当金一覧

券種組み合わせ配当人気順
単勝1350円1番人気
複勝1, 2, 7130円, 130円, 170円
枠連1 – 2580円1番人気
馬連1 – 2650円1番人気
ワイド1 – 2270円1番人気
1 – 7370円3番人気
2 – 7500円6番人気
馬単1 → 21,200円1番人気
3連複1 – 2 – 71,430円3番人気
3連単1 → 2 → 75,480円7番人気

2026年の京都芝1800m(外回り)で行われた「きさらぎ賞」は、競馬の戦術的な醍醐味と、サラブレッドの持つ絶対的な瞬発力の限界が交差した、極めて特殊な一戦となりました。このレースを理解するためのキーワードは、**「62.2秒のパレード」「10.9秒の閃光」**です。

1. 異常なラップ構成:重賞の概念を覆す「散歩とF1」

このレースのラップタイムを詳細に見ると、その特異性が浮き彫りになります。 12.9 - 11.6 - 12.1 - 12.6 - 13.0 - 12.1 - 11.6 - 10.9 - 11.2

前半1000m 62.2秒の超スロー

まず、前半1000mの通過が62.2秒。これは古馬の重賞レベルであれば、ほぼ「歩いている」と表現しても過言ではない超スローペースです。特に5ハロン目(800m-1000m)で記録された13.0秒というラップは、各馬が完全にリラックスし、スタミナ消費が実質ゼロに近い状態で直線を迎えたことを意味します。

ラスト2ハロン目 10.9秒の「衝撃」

しかし、本当の衝撃は直線の入り口、残り400m地点で訪れました。ラスト2ハロン目に刻まれたラップは10.9秒。 これは1200mのG1級スプリンターが全力で加速する際に計測されるような数字です。中盤の13.0秒から、一気に10.9秒へと時速を跳ね上げる――。この極端な「ギアチェンジ」の要求こそが、本レースの勝敗を分けた絶対的なポイントでした。

PCI(ペースチェンジ指数)60.2が示すもの

このレースのPCIは60.2。これはスタミナの持続力よりも、後半の瞬発力に完全に振り切った「上がり特化型」のレースであったことを示しています。

2. 展開フェーズ解説:膠着から爆発へ

序盤~中盤:誰も動かない「静かなるパレード」

逃げた6番コレオシークエンスが完全にペースを支配しました。道中、誰も外から競りかけることなく、馬群は一つの「塊(団子状態)」として進みました。 この展開がもたらした最大の恩恵は、後方にいた馬たちにもありました。馬群が凝縮していたため、最後方にいた**ラフターラインズ(7番)**ですら、先頭との物理的な距離がわずか3〜4馬身程度という、スローペースにあるまじき「射程圏内」に留まることができたのです。

終盤:時速70kmへのギアチェンジ

京都外回りの下り坂を利用し、各馬が徐々にスピードを上げ始めましたが、本格的な火花が散ったのは直線の平坦部分でした。 ここで求められたのは、長く良い脚を使う持続力ではなく、一瞬でトップスピードに達する「瞬発力」でした。10.9秒という極限の加速に対応できず、ここで脱落したのが1番人気タイのショウナンガルフでした。

3. 上位入線馬の勝因とポテンシャル分析

【1着】ゾロアストロ(ハマーハ騎手):内枠の利とモーリスの血

  • 勝因: 通過順位5-4。道中、1枠1番を活かしてインの好位を死守。物理的なロスをゼロにしたことが最後にアタマ差の勝利を呼び込みました。
  • 技術的ポイント: ラスト2ハロンの10.9秒の区間で、前の馬が作った進路へ迷わず突っ込める反応速度は秀逸。父モーリス譲りの「馬力の要る瞬発力」を、この極限の加速勝負で証明しました。

【2着】エムズビギン(川田将雅騎手):完成度の高さと「横綱相撲」

  • 内容: 通過順位2-2。逃げ馬を射程に入れ、自ら動いて捕まえに行く「最も正攻法」な競馬をしました。
  • 評価: 上がり33.5秒は十分に優秀です。目標にされ、内外から強襲を受けながらも粘り抜いた根性は、次走以降の安定感(特に川田騎手×友道厩舎の信頼性)を裏付けるものでした。

【3着】ラフターラインズ(藤岡佑介騎手):異次元の末脚 32.8秒

  • 衝撃度: このレースの「真の主役」はこの馬と言えるかもしれません。通過順位8-7という後方から、メンバー唯一の**32秒台(32.8秒)**を繰り出しました。
  • 物理的限界への挑戦: スローペースで前が止まらない中、自らの絶対速度だけで追い詰めたパフォーマンスは圧巻です。次走、広い東京コースやペースの流れる展開になれば、クラシックの主役候補に躍り出る一頭です。

4. 敗戦馬の徹底分析:なぜ人気馬は沈んだのか

【9着】ショウナンガルフ:ハービンジャー産駒の限界点

  • 敗因の深掘り: 道中3〜4番手と理想的な位置にいながら、直線で全く伸びませんでした。上がり3F 34.3秒は上位陣と1.5秒近い差があります。
  • 血統的な矛盾: 父ハービンジャーは「長く良い脚を使う」持続力に長けた種牡馬です。今回のように「13.0秒から10.9秒へ一気に加速する」という、筋肉の瞬発的な収縮を求められる展開は最も苦手とする条件でした。重賞データでの「ハービンジャー産駒×この条件=単勝回収値0」という不吉な予兆が的中した形です。

【4着】コレオシークエンス:スロー逃げの皮肉

  • 内容: 理想的に落とし、理想的に粘りました。しかし、京都外回りの長い直線では、スローに落としすぎると後続の「究極のキレ」を温存させてしまうというリスクが露呈。最後は自分以上の瞬発力を持つ馬たちに飲み込まれました。

5. まとめ:きさらぎ賞が示した「2026年クラシック」の指針

今回のきさらぎ賞は、スタミナの競い合いではなく、あくまで**「瞬発力テスト」**でした。

  • 教訓1: 京都外回りのスローペースは「血統的な瞬発力(サンデー系・モーリス系)」が、持続力型(ハービンジャー等)を圧倒する。
  • 教訓2: 32秒台の脚を使えるラフターラインズのような存在は、展開不向きを個体能力で破壊できる。
  • 教訓3: インでロスなく立ち回る現代競馬のセオリーが、10.9秒という極限ラップにおいても有効であること。

勝利したゾロアストロの器用さと、敗れてなお強烈な印象を残したラフターラインズの爆発力。この2頭が、春の皐月賞・日本ダービーにおいてどのような「逆の適性」を見せるのか。スタミナが問われる本番でこそ、今回の「瞬発力特化戦」の価値が逆説的に証明されることになるでしょう。

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